読書ノート 2008


文章のみがき方

誰か

草原の椅子

避暑地の猫

サウスバウンド

チーム・バチスタの栄光

てのひらの迷路

にぎやかな天地

『空海の風景』を旅する

灰色のピーターパン

空海の風景

偽善エコロジー

林住期

あてになる国のつくり方

あの人に会いたい

死都日本

地球は火山がつくった


『文章のみがき方』(辰濃和男)

「文章のみがき方」を、しぶとく読み続けているんですが
読んでいるときは、なるほど‥と思ったとしても
あとに残るものは余り多くありません。
難しいことは苦手なんですが、電車ではちゃんと読めるんです。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
漢字が多すぎて、ページ全体が黒っぽくなっているということはないか。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

うむむ、そんなにひどいのがあるんでしょうか?
確かに、ひらがなの微妙な美しさは捨てがたいものがありますね。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
『嫁さんになれよ』だなんてカンチューハイ二本で言っていいの
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

ご存じ、俵万智さんの「サラダ記念日」の、きっと誰もがあっと驚くような歌ですね。
なるほど、まいったな‥てな感じですね。

ふと思い出したのが次の歌です。

「告げられぬ言葉とともに かきまぜて とかしておりぬ コーヒーシュガー」

言うまでもなく、俵万智さんの作品ですよ。
わが親愛なるYくんの描いた絵とともにお贈りします。



『誰か』(宮部みゆき)

最近読み始めた三冊目の本を読み切りました。
宮部みゆきの「誰か」(文庫本)です。
ちなみに、読み始めてすぐに気がついたことは
すでに(ハードカバー本で)読んだ本でした。

こんなときは悔しくなって、それで‥読んじゃうんです。

読んだはずなのに、ことの顛末については記憶がなく
最後までミステリアスでした。
肝心なところはたいてい忘れてしまいますから
繰り返し読むことが必要なんですね、わたしの場合。

あはは‥
しばらく放置していた「ローマ人の物語]I」に戻ります。
もう一冊は「国際機関ってどんなところ」です。
新たな三冊目への誘惑がありますが、ここは頑張ってみますとも。



『草原の椅子』(宮本輝)

今日から出勤です。
久しぶりにチン電に乗るのが楽しみです。
あはは‥読書を楽しむことができるからです。

文庫本に切り替えています。
好きな作家である宮本輝氏の「草原の椅子」を読んでいて
気になる言葉を見つけました。

徒手空拳‥
しばらく、長いタイトルが続いたので
今回は四字熟語にこだわってみたわけで
これをタイトルにしました。
意味は、あとで調べてみます。

お休み中は時間がありすぎるせいか、読書が滞っていました。
ハードカバーは寝ころんで読むのが難しいからです。

「ローマ人の物語」はようやく3世紀後半に入っていますが
あの偉大なローマ帝国にほころびが出てきて
滅びに向かうところが、とても辛いです。

帰りにチン電に乗ったときのことですが
早速本を読み始めて、住吉大社前まできたときに
どなたかが言うではありませんか。

ある客「この電車、姫松を通りますか?」
運転手「通りませんよ〜」 (おいおい、間違うなよ‥)
別の客「天王寺に行きますか」
運転手「行きませんよ〜」
(えっ、本当??)

慌てて降りたのは、わたしだけではありませんでした。
[えびす町行き]が連続してきたわけです。
(それは経験上、知っているはずなんですが‥)

何度か、[えびす町行き]に乗ってしまうことがあり
新年早々だけは、間違いを避けたいもので
浅い読書のせいで、助かりましたとさ。



『避暑地の猫』(宮本輝)

少々疲れ気味‥。 「避暑地の猫」では重すぎますね。

久しぶりに「ローマ人の物語」を読みます。
あと、3冊で終わるはずですが、
ハードカバー故、時間がかかりそうです。

その前に
「いい旅夢気分」を見ます。



『サウスバウンド』(奥田英朗)

しばらくネットよりも読書に精を出していたわけですが
当然のごとく、当たり外れがありました。

そんな中で面白かったのは、次の2つでした。

@サウスバウンド
 小学6年生が主人公のようですが、その父親が破天荒で
 われわれ、おじさん族が喜ぶ物語でした。

Aチーム・バチスタの栄光
 100万部突破のベストセラーはホンモノでした。
 まもなく映画が封切りですが、ワトソン役の田口公平が
 女性(竹内結子)に変わっているのが不満です。
 あはは‥見に行きますとも。

今晩はキムチ鍋でした。
キムチ鍋が辛いものだと思ったのは、今回が初めてです。



『チーム・バチスタの栄光』(海堂尊)

映画「チーム・バチスタの栄光」を見てきました。

W「やっぱり、映画を見てから本を読むべきやね」
M「本を読んでいないと肝心なところがわかりにくかな」

もちろん
原作本と映画では同じはずはないんだけれど
本の方が緊迫感がありました。

途中、白鳥氏(阿部寛)が
うどんをおかずにして、そばを食べていたところが気になりました。

(そういえば、親子丼をおかずにして、ご飯を食べていた元同僚がいましたね‥)

2度ほど、ウトッとして起こされました。

あはは‥読書の方は、歴史物に切り替えます。



『てのひらの迷路』(石田衣良)

「ちなみにこのときに読んでいた小説が何だったか、本箱をひっくり返してもわからなかった。
それでいいのだと思う。本というのは、いつまでも心にとどめておくものでなく、さっと通過して、忘れさるものだ。」

石田衣良氏の「てのひらの迷路」というショートショートのなかの一文である。
もの書きたるもの、どんなジャンルのものもこなすんだな‥と思うことしきり。

いつものように、本は読んでいる。
ただ、何を読んだのかをすぐに忘れてしまう日々が続いていたので、これを読んで、少々安心した。
春の夜長の読書は、ただの時間つぶしかもしれない。

ややこしいことにはこだわらず、さっさと捨て去る勇気が自然に湧いてくる。
あはは‥根気が続かないと書いた方が正しいのだが、すべてを春のせいにしてしまいたい気分である。

春の夜は気紛れに過ぎていくことがフツーじゃないかな?



『にぎやかな天地』(宮本輝)

「逢うてから、さあ、お前のお母さんがお前のために書いた詩や、と総助に言うて、これを見せるつもりやったのに、きのう





『空海の風景』を旅する(NHK取材班)

「5月12日、藤原葛野麻呂を大使とする遣唐使の一行に加わり、葛野麻呂や橘逸勢らとともに第一船に乗って難波の津を出帆。7月6日、肥前国松浦郡田浦を出る(最澄らは第二船に乗船)。翌日から、暴風雨にあって船団は四散する。8月10日、福州長渓県赤岸鎮(福建省霞浦郡赤岸村)に漂着。10月3日、福州に廻航させられる。大使葛野麻呂のために、福州の長官に上陸許可を求める書を代筆する。11月3日、福州を発って長安に向かう。」

東シナ海を渡るのに要した日数は、35日です。もちろん、どこに行くともわからないままの漂流を重ねた末でした。なお、第一船と第二船は、頑丈につくられていたおかげで、なんとか中国の海岸にたどり着きました。粗悪につくられていたという第三船はどうにか、戻ってきたようですが、第四船はついに行方不明となってしまいました。風向きが逆にもかかわらず、夏場にこだわって中国に向かったことと、船底が(たらい船のように)平底であったことなどが海難を招いた原因のようです。

なお、現在であれば、『新鑑真』号で、大阪南港から上海まで2日間で航海できます。2週間に一度のコースですが、お急ぎでない限り、これもまた、いいかもしれません。いえ、わたしにはそんな予定はありません。

「一行は、11月3日の福州出発からひと月半後、12月24日、ついに長安入城を果たす。」

今と比べると、途方もないくらい日数のかかる旅だったことを記録しておきたいと思った次第です。

梅原猛『最澄と空海』、司馬遼太郎『街道を行く9 高野山みち‥』、司馬遼太郎『空海の風景』(上・下)に次いで、『空海の風景』を旅する、を読んできました。南都仏教や最澄の天台宗と比べて最も難解だったのが、空海の密教でした。四国人としては、ただただお大師さんを拝んでおきたいなんてのが、結論のようです。



『灰色のピーターパン(池袋ウエストゲートパークY)』(石田衣良)

「二十歳をすぎたいい大人のおれが、目のまえで小学生においしい獲物をさらわれていく。果物屋の店番なんかやっている場合じゃないよな。おれもなにかITビジネスを始めたほうがいいかもしれない。
そうしたらフィギュアどころか、経営難のプロ野球球団やでかいメイドの描かれたビルを、丸々買えるかもしれない。おれは宝くじを買う前に、一億円のつかい道を考えるタイプなのだ。
なんだか救われない話。」





『空海の風景』(司馬遼太郎)

「護摩というのは、火をもって供養をするということで、釈迦の仏教にはこれがなく、むしろこの種のものを外道として排した。しかし、密教は釈迦が嫌悪した護摩をとり入れたがために、空海の護摩に対する関心がつよい。

護摩は、インド古来の土着宗教であるバラモン教から系譜をひいているのだろう。

恵果はこの重なる宿縁を奇とし、空海に対し、「遍照金剛」という号をあたえた。遍照金剛とは大日如来の密号で、金剛とはその本体が永遠不壊であることを言い、遍照とは光明があまねく照らすことを指す。」





『偽善エコロジー』(武田邦彦)

「2007年3月9日、米ブッシュ大統領とブラジルのダシルバ大統領が会談しました。ブラジルはサトウキビからバイオエタノールを作って、それで自動車を走らせる、アメリカはトウモロコシからやはりバイオエタノールを作って、それで自動車を走らせる、それで、今自動車で使っているガソリンを20%削減しようということで合意しました。

そしてアメリカでは今まで食料として使ってきたトウモロコシやオレンジ、コムギの畑を燃料用のトウモロコシ畑に切り替えました。日本でいえば九州全域にあたる広大な面積が、バイオエタノール用のトウモロコシ畑に変わったのです。その影響は直ちに現れて、小麦粉の不足で讃岐うどんの値段が上がり、続いてオレンジジュース、マヨネーズと、2007年の春の異変が起こったのです。

人間があまり深く考えないで行動すると、とんでもないことが起こります。その一つの例がこのバイオエタノールで、ブッシュ大統領がバイオエタノールがよいと演説し、当時の日本の安倍首相がそれを支持したことです。その結果、トウモロコシはいうまでもなく、小麦、小麦から作るパンやうどん、それにバイオエタノールにするトウモロコシ畑が増えたので、そのとばっちりを受けてオレンジのようなものまで一斉に値上がりしました。」

このままでは、食材や料理に無知なわたしには、讃岐うどんやオレンジジュースの値上がりの理由が分かっても、マヨネーズの値上がりの理由は分からないままです。それで調べてみたところ、「マヨネーズは食用油で作る」→「食用油は大豆をしぼって作る」→「アメリカの農家の多くが、トウモロコシを作る方がもうかるといって、大豆の作付けを減らすという話になった」→「それで大豆が値上がりした」という道筋がつかめました。ここまで、丁寧に説明して欲しいと思いました。さて、黒人初の大統領オバマ氏に替わったところで、どんな風になっていくのか注目してみたいところです。

「実際、温暖化によって日本の海水面がどのくらい上がるかというと、約10センチくらいは上がるだろうと言われています。温暖化で海水面が上がるのは、熱で膨張するからです。電気ポットに水を入れるときに少しフタより控えたところに線が入っていて、それ以上は入れないようになっているのも同じ理由からです。」



『林住期』(五木寛之)

「私の林住期は、まず身のまわりのモノを捨てることからスタートすべきだったと、ため息をつきながら反省している。いろんなものが体にぶらさがっていたのでは、人生のジャンプどころではないだろう。肥大した人間関係、あふれ返るモノ、それから解放されることが第一歩だ。いただいた名刺は、申し訳ないが処分する。年賀状などは書かない。

私が以前から言っていたことの一つに「腹八分」のすすめ、ということがある。「腹八分」とは、よく耳にする言葉だが、それだけでは十分ではない。年齢というのも、大きな問題である。

伸び盛りの十代までは、腹十分。つまり食べたいだけ食べて、しっかり育つ。
二十代に入れば、腹九分でいい。
三十代は、腹八分。ここが基準である。
四十代になると、少しひかえて腹七分。
五十代では、腹六分。以下、十歳ふえるごとに一分ずつへらしていく。
六十歳をこえたなら、腹五分。七十代に達したときには、腹四分が適当だろう。現在の私は、ほぼ一日あたり一食半。やや多めかもしれない。
八十代では腹三分。九十代で腹二分。百歳で腹一分というのは、いささか酷だろうか。百歳をこえたらカスミを食って生きていただく。」

五木氏の「林住期」とは五十五歳をこえた第三の人生のことである。年賀状については、なるほどと思ってしまうが、腹六分は苦しいと思う。



『あてになる国のつくり方』(井上ひさし)

2001年8月から2007年7月までの1年間に広島では4,977人、長崎で2,564人が原爆症で亡くなられた。累計では広島が22万6,870人、長崎が12万9,193人。総計で35万6,063人の方々が亡くなっている。ですから、広島、長崎でのあの2つの原子爆弾はまだ爆発が続いていて、50年以上たっても人体を破壊し続けています。

広島、長崎でのあの2つの原子爆弾はまだ爆発が続いているという言葉が衝撃的です。

「和牛」とは、日本の在来の牛で、黒毛和牛、渇牛和牛、無角和牛、日本短角和牛の4種類に分けられます。「国産牛」は、「和牛」以外の国内産の牛を指し日本で生まれたホルシュタインなどの肉用のオス牛が代表格です。ところが日本の企業が外国で育てた「和牛」が生きたまま輸入されてくるから話はややこしくなります。日本の牧場で3か月以上飼育されて「国産牛」になっているのです。いまはオーストラリア産が多いのですが、ここ数年以内にアメリカ生まれの「和牛」が年間10万頭単位で上陸してくるだろうと予測されています。正直なところ、もう規制や表示ではどうにもならない状況です。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によれば、「和牛」とは、明治時代に日本在来[1] の牛に外国種を交配・改良した、食肉専門4品種の牛のことで、血統的には、中国青海黄牛の一部と共通の祖先を持つと考えられています。肉専用種で、黒毛和種・褐毛和種・日本短角種・無角和種の4品種とその4品種間の交雑種及び前記の交雑種を含む5品種間内の交雑種のことです。 牛の品種を表した言葉で、「国産の牛」という意味ではないですが、国内で出生し、国内で飼育された牛という条件がついています。さらに、和牛の内、9割以上を黒毛和牛が占めているとのことです。その主なものに但馬牛(神戸牛、松阪牛、近江牛などの素牛)があります。「外国産和牛」というのは、「和牛」とは別モノということになるようです。和牛農家は主に繁殖農家と肥育農家に分けられます。 繁殖農家は子取り経営とも言われ、雌の親牛や後に親牛となる育成牛を飼育しており、子牛を売って経営しています。雌牛に種付けをして子を産ませ、数ヶ月育成した後、セリにかけます。 肥育農家は肉用に子牛を太らせ、食肉センターに出荷して経営しています。家畜市場で開かれるセリで、肥育用の素牛を購入し、濃厚飼料を中心に給与することで体重を増やし、サシ(脂肪交雑)を入れ、およそ30ヶ月齢まで肥育した後出荷します。

[1] 中国大陸北部でインド系の牛とシルクロードを経て入った欧州系の牛との交雑に端を発し、朝鮮半島を経て日本に入ってきたものが在来化したと考えられます。

弁護士たちに私が、「ちなみに、地鶏ってなんだと思っているのですか?」と訊くと、「それは地べたで飼っている鳥のことでしょうよ」と2人が声をそろえて言うんですよねえ。「それは平飼い、放し飼いと言うのです」と言い返すと、「ええ、そうですか、じゃあ、地鶏って何ですか?」と聞き返されました。この違いさえ分からない人がほとんどです。だから、地球の裏側にあるブラジル産の地鶏が流通したりする。ラベルの貼りかえで何だってやってしまう。そういう企業が多すぎる。正解は自分で調べてください。それがフツー人としての責任です。勉強しないと、自分の命が守れない時代なのですよ。フツー人だからといって、「知らない、わからない」では何事もすまされない時代にもう突入しているのです。正しい知識こそが、最大の生活防御法であり、生き抜くための武器になるのです。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によれば、「地鶏(じどり)」とは、日本農林規格 (JAS) に記載されている、在来種由来の血液百分率が50%以上の国産銘柄鶏の総称。在来種純系によるもの、または在来種を素びなの生産の両親か片親に使ったものです。飼育期間が80日以上であり、28日令以降は平飼いで1m2当たり10羽以下で飼育しなければなりません。平飼いとは、鶏舎内、又は屋外において、鶏が床面(地面)を自由に運動できるようにして飼育する方法のことです。秋田県の比内地鶏、鹿児島県を中心とする九州南部の薩摩地鶏、愛知県の名古屋コーチンを日本三大地鶏といいます。3種とも出荷数は相当なものですが、近年になって徳島県の阿波尾鶏が地鶏の出荷数でトップクラスになりつつあるそうです。

フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』によれば、「ブロイラー(英語:broiler)」は、肉鶏の一品種。食肉専用・大量飼育用の雑種鶏の総称。具体的品種としてはチャンキー、コッブ、アーバーエーカなどが主なものとなる。もともとはアメリカの食鶏規格の用語で、孵化後2ヵ月半(8-12週齢)以内の若鶏の呼称である。ブロイル(broil)とは、オーブンなどで丸ごと炙り焼きすることの意味で、ブロイルして売るのに適した大きさの鶏であるためこう呼ばれた。

ご承知の通り、冷戦時代は世界が東側と西側に分かれていました。経済でいえば、東は社会主義に基づく計画経済、西側は資本主義に基づく市場経済という棲み分けがされていました。多少の貿易はありましたが、東は東、西は西と、経済圏が2つに分かれていたわけです。それが冷戦の終焉によって、1つの経済圏、マーケットになりました。市場経済が地球を覆うことになった。そして経済の世界でさかんに言われたのは、「大競争」です。なぜ大競争かというと、世界がひとつの市場になった。従来の東は東、西は西での競争ではなく、地球全体がひとつの市場になって競争が展開されるという意味で、大競争と言われるようになったのです。これが経済のグローバル化と呼ばれる現象です。

「資本主義経済」と「市場経済」とがゴッチャになっていたので、これですっきりしました。

いつか引退したらやろうと思っていることも、突然に死が到来したらできなくなってしまいます。やりたいこと、やるべきだと考えていること、やらなければならないと考えていることは、先送りせずに今やっておいた方がいい、あるいは、大切なものを仕事にかまけてないがしろにしてきたのであれば、今すぐ大切なものの元に戻るべきだという判断が生まれたのだと思います。そしてこれは、経済のグローバル化が、生活のグローバル化に深化したということかもしれません。地域に戻る、生活に戻るということは、地域や個人が生命圏である地球と向き合うということでもあるからです。地域や個人とグローブが直結するということが、グローバリゼーションのもう一つの特徴でもあるわけです。生活者一人一人が、家庭に戻る、地域に戻る、それから悲しさや優しさなどに人生の価値を見いだすようになる、そうしようという心が、9・11テロを境に、人々の心の中に芽生えたのであれば、グローバリズムはさらに進んでいくでしょう。しかしそれは、経済に偏りすぎたグローバリズムとはことなる道になるのではないでしょうか。冷戦の前に戻るわけにはいきませんし、情報通信の進化はもちろん続きます。市場の世界では、コスト競争というもっとも強力なエンジンが働き続けます。しかし、普通の消費者が安いものを買うかどうかは、市場の原理とは全く別な、個人の問題です。人々が、経済の論理以外の価値観で人生や環境を考え始めたとすれば、グローバリズムの原理と考えられてきた市場は、より小さな世界とみなされるようになるのかもしれません。

その方が人間的だと思いました。



『あの人に会いたい』(「NHKあの人に会いたい」刊行委員会編)

学ぶことの少ない人は牛のように老いる。彼の肉は増えるが、知恵は増えない。

インド哲学の権威である中村元氏の記事から拾ってみました。なんだか、牛さんに申し訳ないような書き方です。これは「ダンマパダ=法句経」という教典にある言葉だそうです。本来は、老いるということは積極的に経験を積んでいるという意味で、決して朽ちていくものではないということが言いたいみたいです。

もちろん、若者にはどうにも言い難い禁句のようなものです。人間らしく生きていくための知恵というものを学ぶことは当然のことですし、それはいくつになっても欠かせないものなんですね。「少年老いやすく、学成りがたし」くらいの意味にとってもいいかもしれません。



『死都日本』(石黒耀)

「カルデラ」はポルトガル語で、「大鍋」という意味だが、大西洋カナリア諸島の現地語では「火山性陥没地形」を指す。大型カルデラは一般にマグマが大量噴出して地下に空洞ができ、山頂が陥没してできる。

1783年、アイスランドのラキ火山が噴火した。ラキ火山はラカギガル火山とも言うが、近くの割れ目から8か月にわたって12.5立方キロの溶岩が流れ出した。姶良火山の入戸火砕流のように400立方キロが短時間に噴き出したわけではないから、規模としては知れている。ところが、噴煙中に含まれる浮遊微粒子が成層圏に広がって日射を遮り、北半球は「火山の冬」と呼ばれる突然の小氷河期に襲われたのである。この年、ヨーロッパの冬期平均気温は摂氏で5度も低く、過去250年間で最低気温を記録した。当事国のアイスランドでは草木が枯れて牛・羊・馬の75%が死に、国民の24%が餓死した。海産が豊かな国であることを考えると、驚くべき死者数である。冷害は北半球全体に広がり、遠く離れた日本にさえ惨事を招いた。1783年に始まり、東北地方で百万人以上の餓死者を出した天明の大飢饉は、しばしば誤って同年8月4日の浅間山噴火が原因と書かれているが、実は7月末の時点で稲が開花せず、浅間山噴火の前に凶作となることが分かっていた。本当の原因は、6月8日に始まったラキ火山噴火による冷害だったのである。

火砕サージとは簡単に言えば火砕流本体から噴き出す光速・光熱のジェット粉砕流である。雲仙普賢岳大火砕流で高台にいた43人の命を奪ったのもサージなら、ポンペイ市民の死因もサージだった。殆どの生物は、火砕流本体の到達前にサージによって死んでしまうのである。

鹿児島港からフェリーに乗って桜島に渡り、島の外周道路を車で走ると20分足らずで大隅半島に抜けることができる。桜島は今でこそ大隅半島と繋がっているが、かつては名の通り島だった。それが1914年の桜島大正噴火で海峡が溶岩に埋まり、陸続きになったのである。



『地球は火山がつくった』(鎌田浩毅)

マグマにはシリカと呼ばれる物質が入っている。ここで、シリカということばを覚えてほしい。シリカは、マグマの粘りけをつくるもとである。シリカが少ないときには、マグマがサラサラと流れる。反対に、シリカが多い場合には、マグマはねっとりと流れる。マグマの説明には、化学のことばを使うと便利だ。地球上の物質は、原子からできている。シリカは、化学のことばでは二酸化ケイ素という物質で、化学式ではSiO2と表される。この化学式は、二酸化ケイ素という物質が、ケイ素Si原子1個に対して酸素O原子2個の割合で結びついてできることを表す。ケイ素は英語でシリコン(silicon)とよばれる。シリカは、ケイ素と酸素がしっかりと結びついた構造をもっている。

火砕流はそのまま英語に訳されて、パイオクラスティック・フロー(pyroclastic flow)となった。「パイロ」とは「火」、「クラスティック」とは「砕ける」、「フロー」とは「流れ」をそれぞれ意味することばである。もともとギリシャ語に語源をもつ単語を使って、英訳されたのである。「火砕流」は、火山の専門用語として定着した。日本語が起源となり、のちに国際的に用いられるようになった数少ない科学用語である。このほかに、「津波」もそうである。英語でtsumamiと書くと、そのまま世界中で通じる。

7000年前の噴火=薩摩硫黄島で始まった噴火→鬼界カルデラができる→@海を渡った幸屋火砕流が縄文土器の様式の断絶をもたらした。Aアカホヤ火山灰は、近畿地方で20cm、中部地方で数センチメートル降り積もるなどして典型的な広域火山灰と呼ばれる。

トラフというのは、海溝とほぼ同じ意味である。細長い溝状の海底地形のうち、深さが6キロメートルを超えないものをトラフといい、超えるものを海溝という。南海トラフは、日本海溝ほど深くないので、トラフと呼ばれる。



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